Concept

「新しいけど、どこか懐かしい」

米国、英国、馬国と四年半におよぶ外国での生活、人々との出会い、文化にふれた体験は、外の世界からあらためて日本を考える良い機会となりました。しかし、最初の米国では合理的な生活スタイルと、その象徴とも言える「消費を是とする捨てる文化」に、日本人としては少し違和感を覚えました。資源の少ない日本では、これまで試行錯誤を繰り返し、大切に使い続ける精神を受け継いできた結果として、日本ならではの価値や文化が生まれた側面があります。

長く使い続けるためには高い品質が求められ、また高い品質を保証する社会の仕組みが一体となった「目利きと修繕の文化」が日本人の誇りでもあったと思います。戦後の日本ではこれまで、アメリカ型の合理的な生活スタイルを受け入れつつも、その一方で、しっかりとしたものづくりが一部の職人の手で大切に継承されてきたことは幸運だったと思います。

米国に続き生活を送ることとなった英国では、歴史と伝統を大切にする欧州の建築家ならびに学生との出会い、そして建築やものづくりの価値観を共有できたことは貴重な経験でした。また、あらためて日本人であることに誇りをもつこともできました。合理性が最優先される用途の建物は別として、建築や環境が使い捨てであっては困ります。

建築の現場においては伝統的な技術を身につけた職人の方との出会いを楽しみにしています。妥協を許さない仕上げには材料の吟味も必要ですが、木の癖を読み、無垢の木が20年後にどう反るか、どう痩せるか、先を読んで造ることのできる職人の仕事や技術はますます貴重になっています。

様々な生活スタイルが国境を越え、日本でもインターナショナルで無国籍な建築や住まいを受け入れる一方で、長年培ってきた伝統と文化、素材そのものを活かす日本の技術、日本人で良かったと思える建築や環境を忘れずに、「新しいけれど、どこか懐かしい」建築デザインを提案していきたいと思います。

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